2015年01月19日

19歳

 36年前か。私は東京新宿区の神田川を見下ろせる青線の名残のあるアパートの

2階の一室にいた。お風呂もなく共同トイレで、隣の部屋には新宿のお店で働いて

いるという女性が住んでいたらしい。正面の部屋には20代の男性が住んでいたと

いうが、顔を見たことはない。勿論隣に住んでいる女性と顔を合わせたこともな

い。大阪から大学で東京にでた私は誰も知り合いのいないアパートの一室に過

ごしていた。部屋の明かりは裸電球に傘をつけたもので、部屋はいつも仄暗かっ

た。2階の部屋にいる住人とたまに顔を合わせるのは、トイレであう若い男性だ

け。大家さんに聞けば、私と違う大学に通う学生だという。その人とも言葉を交

わしたことがない。ただ寝るだけの部屋だと言ってもよい。若さだけが悶々とし

て、ほぼ毎日、大学の授業には出ずに、サークルの先輩と飲んだり、アルバイト

をしたりして帰りは夜の12時を過ぎていた。アパートのまえの神田川の橋の上か

ら見上げた西新宿の高層ビルが真夜中でも光が消えることなく、別世界のように

見えた。その当時の19歳の大学生と言えば、ほぼ皆飲んだくれとアルバイトのよ

うな生活を送っていたのではないだろうか・・・

 彼は大学生ではなさそうだ。19歳男性。YOUTUBEに犯罪を思わせるよう

な動画を投稿して旅をしていた。この旅も逃避行をいうほどにはあまりにかけ離

れていて、単に自分の行先の風景を動画に乗せていたにすぎないように思える。

逃避行の資金はたった8万5千円だ。8万5千円で何日を過ごせると思ったのだろう

か。また8万5千円の先をどうするかには何も考えが至っていない。以前の女性英

会話講師殺害の犯人の逃走に比べるとあまりに穏やかで、ほんの爪の先ほども考

えておらず、幼稚というか、単なる家でレベルというか・・・それほどのものと

しか思えない。この旅が世間の注目を集めたのは、旅に出る前の動画がいたずら

にはしては度を越していて、食品に爪楊枝を混入させている動画や、万引きをし

ているかのような動画を載せていることだ。万引きは犯罪であり、購入していな

い商品に異物を混入させて商品棚に返却することも犯罪となるからだ。警察に捕

まった時は素直だったという。逃亡に疲れ果てたというわけではなかっただろう。

鬼ごっこで仲間外れにならないほどに自分を見つけてほしかったというぐらいか。

 捕まった彼にはこれから驚きが待っているのではないか。どういう驚きかとい

うと自分が他愛なくやったことへの社会の代償を突きつけられるからだ。彼は人

を殺してはいないし、大金をだまして奪ったわけでもない。それでも自分が考え

る以上の社会の罰則がまっているだろう。

 「ただ僕は面白おかしいと思った動画をネットに挙げただけだ。勝手に騒いで

いるのはそっちじゃないのか、と。単なる悪戯なんだ」

 若者に対しての社会性を浸透させる機会が希薄になっている。きっと自分の内

に逃げ込める手だてが以前にもまして増えているからだろう。その最大の手だて

はネットの世界だ。

 19歳。子供から大人への変遷期(インターフェイス)はいつの時代も危うく

感じる。
 
posted by P.S.コンサルティング at 11:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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